立川市のブランドメッセージ「立川くらいが、一番いい」ができるまで

立川市のブランドメッセージ「立川くらいが、一番いい」を目にしたことはありますか? 今年の広報たちかわ4月25日号の表紙で発表され、多摩モノレールの駅構内ポスター等でも目にする機会が多くなってきました。

なんだかやさしくて、わかりやすいメッセージとロゴ。この形にするまでにはきっと大変だったのではないかと想像していたところ、立川市のご担当の方に直接お話を伺うことができました。

お話を伺ったのは、立川市役所の広報課シティプロモーション推進係長の三上さん。取材当日はブランドロゴマークの刺繍が入ったかわいらしいトートバッグをお持ちいただきました。三上さんはブランドメッセージやロゴができ上がる過程を間近で見てきて、市民の皆さんがブランドメッセージに込めた強い思いを受けて、個人的に作ったそうです。

立川市のブランドメッセージについて

—— ブランドメッセージとは、そもそもどういうものなんでしょうか?

立川市では「市の魅力を一言で表す合言葉」と表現しました。立川だけにしかない差別的優位性をもったライフスタイルを示すメッセージです。シティプロモーションの第一人者である東海大学 河井孝仁教授をアドバイザーに迎え、公募市民の方や企業推薦の方と立川市職員有志によるワークショップで制作された4つの候補案から、広く投票を募り決定しました。

立川らしい、立川にしかないライフスタイルというのはどういうものかを考え、まちの未来像である「にぎわいとやすらぎの交流都市」と市民の皆さんが思ってくださっている「立川市の、立川にしかない魅力」を掛け合わせ、「立川市に住むとこういう暮らしができるよ」というまちの魅力を表すとともに、まちの未来に向かって築いていく目印にもなっている言葉です。

—— 立川市の今とこれからの魅力について、色々な人の思いが込められた合言葉なんですね。どういう経緯で作ることになったのでしょうか?

立川市のシティプロモーション担当ができたのが6年前になります。これまでにさまざまなプロモーションを進めてきました。例えば25歳〜39歳の女性向けの「#Tag magazine(ハッシュタグマガジン)」という冊子を作成したり、JR南武線沿線の自治体と連携した多角的なプロモーションの実施や、市の魅力を詰め込んだ「プロモーションブック」の発行等も行ってきました。

電子ブック 立川市 広報誌 広報たちかわ 令和2年2月25日号
[ 主な内容 ] ▶4面 子ども予防接種週間 ▶5面 ファーレ立川アート ミュージアム・デー ▶6・7面 ハッシュタグマガジンVol.3を発行 「広報たちかわ 令和2年2月25日号」

そういった活動の中で、立川市シティプロモーション基本指針が令和元年の6月に改訂されました。

立川のシティプロモーションは、地域の担い手の方を増やしていくため、4つの総量(地域参画総量)を増やすことを目的としています。 「立川をお勧めしたいという思い」「地域活動に参加したいという思い」「まちをより良くしようとする働きに感謝する思い」「市外で立川をお勧めしたいという思い」これら4つの総量を増やしていくため、その活動の一つとして、市民の皆さまにご参加いただき、「立川らしいライフスタイル(ブランド)とは何か?」を表現するメッセージを制作するワークショップを開催したのが始まりです。

立川市と他市の違いや、良いところ・足りないところを行政が発信するのではなく、多くの市民の方にご参加いただき、たくさんのご意見から「立川市はどんなまちか」を決めていきました。市民の方には「たしかに、こんなまちだ」と共感していただき、市外の方に対しては「こんなまちです」と発信できるものになるよう、多くの人の力で作り上げていきました。

立川市ホームページ:立川市シティプロモーション基本指針

https://www.city.tachikawa.lg.jp/koho/citypromotion/shishin.html

ブランドメッセージ制作ワークショップについて

—— ブランドメッセージとロゴマークは、どのように生まれていったのでしょうか?

初めに、広報たちかわ7月25日号で「ブランドメッセージ等制作ワークショップ」のメンバーを募集しました。これにご応募いただいた市民の方が4名、市内の企業から推薦の方5名、職員有志5名の計14名にワークショップにご参加いただきました。

全4回でワークショップを開催したのですが、「どんな人が立川に住んだら、幸せになれるだろうか」というストーリーを3グループに分かれて考えていき、立川の魅力についてたくさん話し合いをしたり、立川市内の目的地を半日かけて巡る「立川市の魅力発見ツアー」を実施したりしました。

4回目のワークショップでは1回目からずっと伴走していただいている、立川にある出版社さんにメッセージ案を制作していただきました。さらにどんなメッセージを出していくかを話し合い、4つの候補を作りあげました。

広報たちかわ2月10日号で、4つの候補の中からブランドメッセージを選ぶ投票を実施し、投票総数3,909票のうち1,745票を「立川くらいが、一番いい」が獲得しました。

電子ブック 立川市 広報誌 広報たちかわ 令和3年2月10日号
▶2面 市民税・都民税の申告 ▶8面 ファーレ立川アートミュージアム・デー ▶特集 立川市教育だより「たっち」 ●みんなで選ぼう! 立川市ブランドメッセージ 「立川市の魅力を一言で表す合言葉」 ●かた...

ただ、多数の票を獲得したものに決めるのではなく、最終的に市長が決定しました。ブランドメッセージ決定を受けて、ロゴマークも出版社さんに制作していただき、4月に公表いたしました。

電子ブック 立川市 広報誌 広報たちかわ 令和3年4月25日号
▶3面 新型コロナウイルスワクチン接種に関する情報 ▶特集 介護保険のお知らせ ブランドメッセージとロゴマークが決まりました! 【立川ぐらいが、一番いい】 にぎやかすぎず、静かすぎず。 まちと自然のち...

—— ワークショップでは、どのようなことを行なったのですか?

参加者の皆さんには、事前に立川市の魅力を、立川のヒト・モノ・コト・トコロ・シゴト・ワザ・カコ・ミライ・クウキの9つの種別から合計20個、付箋に書く宿題が出ていました。

ワークショップでは、参加者が3つのグループに分かれ、各グループの中でそれぞれが持ち寄ったキーワードをもとに、立川に住むことで幸せになれそうな人のペルソナ像(具体的な人物設定)を3人決めていきました。名前や性別、世帯年収や趣味、大事にしていること、悩みや課題等から人物像を考え、人物のイラストまで描いていったんです。

—— 1回目のワークショップでは、立川市に住む人物像をグループの中で作り上げていったんですね。

はい。初対面の人同士の集まりでしたが、いざ始まってみると皆さん熱い思いを持っていらっしゃる方なので、あっという間に終わってしまった印象のワークショップ1回目でした。

2回目のワークショップでは、「1回目で作ったペルソナが挫折し、立川に関わりを持つことで、悩みを解決し、挫折を乗り越え、希望や野望を実現させていくストーリー」をグループで作成していきました。 ポスターセッションといって、グループの中の一人だけが発表者として残り、他のメンバーは違うグループを見にいくという流れを各グループが同時に繰り返し行なっていく方法で、3人のペルソナが悩みをどうやって解決して、立川に住むことでどうやって幸せになれるのかを考え、そのストーリーをプレゼンしていきます。

考えたストーリーをもとに、参加者の皆さんそれぞれが現在の主人公から原点の主人公への手紙を書いていただきました。「立川に住めばこんな暮らしができるから、大丈夫だよ」等の内容で、A4用紙に200字程度で作成していきます。制限時間いっぱいまで、皆さんとても一所懸命に書いていました。実はこの手紙の内容もブランドメッセージのもとになっています。

—— 今度は物語を作っていったのですね。挫折から始まって希望を実現させていく流れを考え、過去の主人公に向けた手紙を書いていく等、ユニークな方法のワークショップですね。その後はどのようなことをされたのですか?

2回目の最後に、3回目で行う魅力発見・共有ツアーの行き先について検討しました。立川を歩くだけでなく、「立川にしかないものはなんだろうか」と深く掘り下げて、魅力を書き出した付箋をもとにグループごとにツアー案を作成していきました。 こちらもポスターセッション方式でプレゼンを行い、どこに市の魅力を感じることができるツアーなのかを投票してもらい、大接戦の結果、多摩モノレールを利用したツアーは立川市にしかできないのではないかという案から生まれた「五感で味わうモノレールツアー立川・秋編」に決まりました。

3回目は、ツアーの目的地を半日かけて巡っていきました。目的地やお店も全て参加メンバーの方が選んでいます。根川緑道の散策とスープカフェ「なんでもない日」に行き、温かいメニューやスープをいただきました。
そこからさらに、「立川市・大町市観光情報プラザ」、地元農家の地場野菜を販売する「のーかる」、「立川駅南口東京都・立川市合同施設(仮称)」の仮囲い内や、立川を代表する企業である株式会社壽屋、サンサンロードでは「くるりん」・「ウドラ」のイルミネーション、「とある」シリーズのオリジナルデザイン自動販売機を見学。商業施設やホテル等が備わった複合施設「グリーンスプリングス」等を散策してから、多摩モノレールに乗り、柏町にある「髙橋果樹園」に行きました。髙橋果樹園の園主で、ワークショップに参加されているメンバーでもある髙橋さんからさまざまなお話をうかがったあと、最後に皆さんで柿狩りをして、立川にしかない魅力を体験するツアーが終了しました。

—— 4回目が最後の回になりましたが、どのようにブランドメッセージを作り上げていったのですか?

これまで「私たちのまちにはどのような魅力があるか」を話し合い、ペルソナやストーリーを作り上げてきましたが、最後となる4回目ではブランドメッセージ案を検討していきました。

4つのメインメッセージとボディコピー案(メインメッセージを説明する文章)をもとに皆さんで意見を付箋に書き出し、話し合いをしていったのですが、皆さん言葉にはとても思いがあり、「この言葉は私たちが出したものに近いかな」「これはちょっと違うんじゃないかな」等、立川市の魅力として伝えたいことは何かを話し合いました。

実際にはここで出されたものが最終形になるまでにはさらにメール等でのやりとりがありました。4回目のワークショップ以降も参加者有志の方々にお集まりいただいて候補をブラッシュアップしていただき、4つのブランドメッセージ案が生まれました。

 

ワークショップの詳細については、立川市のホームページにも掲載されています。

立川市ホームページ:ブランドメッセージ制作ワークショップ

https://www.city.tachikawa.lg.jp/koho/shise/koho/citypro/brandmessage/workshop/index.html

ブランドメッセージのこれから

—— 最後に、ブランドメッセージの今後の広がりや、メッセージに対する思いがありましたら教えてください。

メッセージやロゴマークはPRの一つの道具として考えており、これをきっかけとして、立川市の魅力発信をさらに進めていきたいです。
例えば、このロゴを見て「これなんだろう?」というところからブランドメッセージを知ってもらい、「立川はこういうまちなんだよね」と語っていただきご自身のものにしてもらうことがとても大事だと考えています。立川市を知っている方にも、知らない方にも、ブランドメッセージの存在を知っていただき、「こういうまちを築いていくんだ」「こういうまちなんです」と発信するときに、ご自身の掲げる言葉として使ってもらいたいです。

また、現在は立川市内のさまざまな企業や団体等に向けてブランドメッセージをご紹介しています。その中でブランドメッセージを知っていただいた方からも、発信していただけるととっても嬉しいです。子どもから自治会の皆さん等、さまざまな方がこのメッセージを使って、立川の魅力を語ってくださることが一番の最終形なのかなと思っています。

そして、このメッセージは未来永劫使うものではなく、立川の未来像が変わったり、メッセージにあるようなまちでなくなってきたら、考え直す時期が来ると思います。だからこそ今、多くの方が現在と未来の立川に対する思いを込めて考え、選んでくださったこのブランドメッセージを大事に多くの方に届けていきたいです。

 

ブランドメッセージとロゴマークのコンセプト

デザインコンセプトは【自然・まち・人が調和する「立川」】。にぎやかすぎず、静かすぎず。まちと自然のちょうど良さ。 中心地の建物や見える山々や川。行き交う人々。 季節や場所ごとにさまざまな表情を見せる「立川」。 その「立川」の文字を分解し、【自然・まち・人】に見立てたデザインで、何でもある、がそこにある。全部が一番いい、立川らしさを表現しています。

このロゴはどなたでも自由に使うことができます(営利事業者等の場合、申請が必要です)。 詳しくは立川市のホームページをご覧ください。 ロゴマークの上部に自由に言葉を入れて使うことができるのが、面白いですね。

立川市ホームページ:ブランドメッセージロゴマークを使ってみませんか?

https://www.city.tachikawa.lg.jp/koho/citypromotion/rogo.html

さまざまな人の思いが詰まった合言葉。

さまざまな立場の人が一緒になって、今と未来の立川の魅力とは何か、どうやって印象深く伝えることができるかを一生懸命考え、磨き上げ、わかりやすい合言葉にしたブランドメッセージとロゴマーク。大変な過程を経て、たくさんの人の思いとじっくり向き合って生まれたものでした。

三上さんのお話にもあったように、メインのメッセージとともに、ワークショップ参加者の皆さんが大事にしていたのがボディコピーの部分で、最後までとてもこだわって議論されていたそうです。

一方的な視点でものを伝えるのではなく、さまざまな人の思いを汲み取り、みんなで真剣に作り上げて生まれた言葉や思いには、人の心を動かすような力があるのだと思います。

立川市のような取り組み方は、簡単にできることではないと思いますが、このような多くの人がさまざまな視点で一緒に考え、作り上げることが広がっていけば、それぞれの地域でそれぞれの魅力が輝いていくのではと感じました。

最後にTAMA ebooks編集部でもロゴと一緒に加えるメッセージを考えました。

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