多摩地域の中でも人気の広〜い公園、国営昭和記念公園。その園内で地球や自然の大切さを学ぶプログラム「富良野自然塾東京校」が体験できることはご存知ですか?
「北の国から」で知られる作家・倉本聰さんが北海道富良野市で塾長を務める「富良野自然塾」のコンセプトを、東京の地でそのまま体験できるこのプログラム。東京校は今年2024年に開校10周年を迎えました。
体験型のため、パンフレットでは魅力が伝わりづらい面がありますが、参加者の反応はとてもよく、もっと多くの方に参加してほしい! ということで、今回TAMA ebooksスタッフが実際にプログラムを体験させていただきました!
「富良野自然塾東京校」とは?
「富良野自然塾東京校」を運営しているのは、国営昭和記念公園をはじめとする全国約80ヶ所の公園の管理運営を2005年より行っている西武造園株式会社。
緑を「作る」だけでなく「守って育てる」造園業の観点から、緑の大切さを伝える「富良野自然塾東京校」や、養蜂を通した環境学習プログラム「はち育®」などの取り組みを行なっている会社です。
そんな西武造園株式会社が「富良野自然塾東京校」を運営するきっかけは、本拠地である北海道富良野の「富良野自然塾」の始まりにありました。
「富良野自然塾」は、富良野にあるゴルフ場跡地で始まりました。このゴルフ場は西武造園株式会社と同じ西武グループのホテル内にあったもので、閉鎖を知った作家の倉本聰さんが、跡地を昔の森に還すことを提案して始まった、自然返還事業と連動した環境教育事業でした。
この事業はゴルフ場跡地に木を植えることだけを目的とせず、その森の中で人と地球の関わりを理解するための環境教育も行なっていくというもので、のちに全国各地の公園で展開され、富良野と同じプログラムを、さまざまな土地でそのまま体験できるようになりました。
その後、東京の子どもたちにも「富良野自然塾」を体験してもらいたい、と倉本さんが考えたときに、前述のつながりから会場の候補になったのが、西武造園株式会社が管理運営に携わる、国営昭和記念公園だったのです。
西武造園株式会社について
西武造園株式会社は、「人と緑」をテーマに、造園や緑化の企画、設計、施工、維持管理を手掛ける企業です。国営昭和記念公園をはじめ、全国80ヵ所563施設の都市公園などの管理・運営も行っています。近年、温暖化や環境破壊が社会問題として取り上げられる中、同社は環境教育への関心や期待の高まりを受けて、今年春に環境学習イベント部署を新設し、環境学習への取り組みをさらに強化しています。
この部署が主体となって、これまでさまざまな部署で個別に実施してきた取り組みに関する情報を共有したり、スタッフ間の経験値のばらつきを埋めたりと、より良い環境教育に向けて事業を推進していくそうです。
国営昭和記念公園について
東京都立川市と昭島市にまたがる、「緑の回復と人間性の向上」をテーマにした日本を代表する都市公園のひとつ。
豊かな緑につつまれた広い公共空間と文化的内容を備えた公園として整備され、多彩なレクリエーション活動の場として多くの人に愛されています。
「富良野自然塾東京校」ではどんなことをするの?
自然環境を学ぶといっても、ただ座学や見学をするだけでは捉えにくいもの。 その点、「富良野自然塾」では、専属のインストラクターがドラマチックにわかりやすく、心に届く表現で参加者に語りかけ、また参加者自身も公園内を歩きながら、五感を使って地球と自然の大切さを学んでいきます。
今回TAMA ebooksスタッフがお世話になるのは、ベテランインストラクターの前杉 昌枝さん(写真右)と、新人インストラクターの佐藤 広章さん(写真左)です。
インストラクターさんたちは作家の倉本聰さんの脚本をもとに工夫を凝らして参加者を導いてくれます。でもその手法は人それぞれなのだとか。
前杉さんは親しみやすい「まさえさん」として、キャッチーでコミカルな身振り手振りや、楽しいお芝居を交えながら案内してくださいました。
本当はこの素敵なプログラムを細かくご紹介したいところなのですが、この語りをぜひ現地で体験していただきたいので、ちょこっとずつでご勘弁くださいね。
4つのプログラム体験レポート!
【プログラム1】緑の教室
集合場所のふれあい広場のベンチに腰掛けると、まさえさんの元気なあいさつと自己紹介が始まりました。テーマパークのアトラクションのようなノリノリのテンションに、ぐいっと引き込まれてしまいます。
ひとつめのプログラム「緑の教室」では、人と森の重要な関わりをクイズなど通して学びます。
人には空気が必要という話から、参加者4人で誰が一番長く息を止められるかの競争開始! 我慢しきれなくなった時の「ああ苦しい!」という体感が空気の大切さをはっきりさせてくれます。
そんな空気を作っているのは……? そう、植物です。
そこで「ここから見えるクスノキ1本に、葉っぱは何枚あるでしょう?」という問題。目線の先には枝を四方八方に伸ばしたとっても立派なクスノキが見えました。
う〜ん、予想もつきません! せっかくのクイズなので、答えはぜひ現地で確かめてくださいね。
このプログラムで、これまで地球のためだと思っていた「空気・水・自然を守ること」が、自分のために必要なことだったんだ! とわかってきました。
【プログラム2】裸足の道
人が地球で生きていくには自然(みどり)が必要だと理解できたところで、ふたつめのプログラム「裸足の道」へ。
ここでは裸足になって目隠しをした状態で園内のコースを歩きます。
裸足で土や芝生を踏む機会、大人になるとなかなかありませんよね。しかも目隠しをしているので、頼りになるのは足の裏から伝わる感触と自分を包む音や風のみ。 これはちょっと踏み出すのに勇気が要るかも……!
安全のためパートナーが手をとってナビゲートしてくれますが、体験中は無言がルールなので、進行方向しかわかりません。
普段頼りきりになっている視覚を遮断し、それ以外の感覚を研ぎ澄ませたことで、土の感触や木々のざわめきをよりリアルに感じたスタッフ一同。漠然とした「自然」のイメージがいつもよりちょっとだけ、くっきりしてきたような気がします。
この体験して感じ取った情報を、「富良野自然塾」では「一次情報」と呼んでいます。人づてに得た情報ではなく、自分の感覚で得た情報から考えることで自分ごととして捉えられる。それを実感するためのプログラムだったんですね。
【プログラム3】1mの地球
ここまで見てきた大切な自然。それが息づく地球のことをもっと掘り下げるのが3番目のプログラム「1mの地球」です。
木立の中に置かれた、球体を一部くり抜いたようなオブジェ。これは地球を1mの球体で表したもので、これを使って地球の内と外の様子を見ていきます。
地球上の水はどのくらいあるの? その中で淡水の割合は? 実際の量では大きすぎて漠然としてしまうところですが、地球を直径1mに置き換えれば身近な容器を使ってわかりやすく表すことができます。私たちが使える水ってこんなに少ないのか! と驚いてしまうかも。
内容は理科や社会の授業のようですが、まさえさんの感情のこもった語り口や楽しい身振り手振りのおかげで聞き飽きることはなく、お勉強感はありません。授業というよりも紙芝居などを間近で見ている感覚に近い感覚で、ぐいぐい引き込まれちゃいますよ!
どんどんパワーアップするまさえさんの勢いにちょっと圧倒される場面もありましたが、
- 私たちが生活できるだけの環境が整った場所は、地球の大きさに対して思った以上に狭いこと
- まさえさんのハートと同じくらい(!?)繊細で絶妙なバランスで、奇跡のような地球の環境が成り立っていること
を実感して、最後のプログラムに向かいます。
【プログラム4】46億年・地球の道
たどり着いたのは、川沿いの小道。道に沿って大きめの石がゴロゴロと敷き詰められています。
ここから体験するのが最後のプログラム「46億年・地球の道」。460mの道を地球誕生から現在までの46億年間に見立てて、歩きながら解説を伺います。
まさえさんによる突然のハッピーバースデー・トゥー・ユー歌唱で、あっという間に地球が生まれた46億年前にタイムスリップ! ここからどんなドラマが始まるのか、ワクワクします。
道中に詳細な解説パネルはなく、あるのは抽象的なオブジェクトや生物の存在を感じさせるような痕跡ばかり。
それでも、まさえさんが語る地球の成り立ちは学校で習ったよりもずっとドラマチックで、何度も凍りついたり熱くなったりしながら今の地球になっていく姿や、その激動に揉まれる生き物たちの様子が目に浮かぶようです。
ところで、460mに置き換えた地球の歴史の中で、人類が生きてきた時間の長さはどのくらいだと思いますか?
詳しくは現地で体験していただきたいのですが、これを実際に目にすると、ここまでで体感してきた自然の大切さや人類が現れてからの歴史の短さがフラッシュバックして、ちょっと圧倒されてしまうかも。
長い歴史の中のほんの短い期間で、地球の環境はどう変わってしまったんだろう? この先の地球と人類はどうなるんだろう?
4つのプログラムで学んできたことが、この道の先にある未来の地球の姿に繋がっていきます。 そして、最後に受け取るメッセージには、涙を流す参加者もいるのだとか……。
でもそれこそが、「富良野自然塾東京校」が伝えたかった、このプログラムで五感で感じて納得してもらいたかったことなんです。
これからの環境教育についても聞いてみた!
「富良野自然塾東京校」が目指すもの
体験レポートにも何回か登場した「五感を使う」。
このプログラムのコンセプトは、参加者の皆さんに五感を使って自然の大切さを学んでもらい、次の行動を起こすきっかけになる「気づき」を得てもらうことです。
自然や環境を学ぶ活動は多々ありますが、どれも伝えたいことの根は同じ。「植物がないと生きていけない」ということです。それを五感を使った体験を通して気づいてもらうのが、この「富良野自然塾東京校」なんです。
印象的だったドラマチックな語りも、「こうしてください」と教えるのではなく、きっかけになるメッセージを伝え、一緒に環境について考えてもらうためのもの。自分に関わることとして捉え、考えてもらうことで、その場では少し理解が追いつかなかった子どもたちにも、いつか点が線になるようにわかってもらえたら。
そんな思いが、熱のこもった素敵な語りにつながっているんですね。
環境教育は未来にどうつながる?
こんなにも壮大な地球で起こる環境問題。必要なことはわかるけれど、本当に人間にどうこうできるものなのかな? と心配になるかもしれません。
そこで、富良野の「富良野自然塾」でプログラムの最後に語られる、南米に古くから伝わる「ハチドリのひとしずく」というお話をご紹介しましょう。
あるときジャングルで火事が起きました。
そこで暮らす動物たちが炎から逃げる中、燃え盛る炎に雫を落とす小さなハチドリが。
他の動物たちが避難を呼びかけるも、ハチドリは「私は私にできることをしているだけ」と言い、雫を運んでは落とし続けました。
ここで逃げてもジャングルの外で生きていけない。それをわかっているからハチドリは行動しました。もしみんながハチドリになったら、ジャングルの火は……?
小さな行動でも、みんなでやったら変わるかも。そのために、まずはひとりひとりが気づくきっかけを作って、広げていくことが大事なんですね。
「富良野自然塾東京校」での体験を、もっと多くの人に!
「富良野自然塾東京校」の対象年齢は小学生以上となっていますが、インストラクターさんが参加者にあわせて説明してくれるので、大人も子どもも安心して参加できます。会社の研修での参加もあり、多い時はひとりで50人に向けてお話しすることもあるとか。
小さなお子さまとの参加なら、地域イベントでの出張プログラムもおすすめです。ペープサート(紙人形劇)などで生き物についてお話しすると、未就学児のお子さんも「なんで? なんで?」と積極的に質問してくれるそうです。それを見て、前杉さんも「興味があれば年齢は関係ない」と感じたといいます。
大人の目線からは「子どもたちが生きる未来に何ができるのか」、子どもの目線からは「自分たちはどう生きていきたいか」。このプログラムを自分で体験して考えた先には、それぞれに受け取るものがあるはず。幅広い世代が参加して、その人ならではの気づきを得られたら素敵ですよね。
そして、もっと多くの人に参加してもらうには、伝える側であるインストラクターの後進育成も必要です。
今回の体験で前杉さんのサポートをされていた佐藤さんは、本校がある富良野での研修を控えており、まもなくインストラクターデビューを迎えるそうです。
体験中、気がつくとびっくりするほど遠くにいて、距離や広さの解説のために大きく手を振ってくださった佐藤さん。インストラクターそれぞれが工夫を凝らした演出で魅せるこのプログラムで、佐藤さんがどんな形で自然について語るのか? 楽しみです!
「富良野自然塾東京校」に参加してみよう!
「富良野自然塾東京校」に参加してみたい! という方は、まずは公園のWebサイトをチェック!
申し込みはお電話のみなので、ご注意ください。
当日は公園内をたくさん歩くので、動きやすい服装と、日よけ・水分補給の対策も忘れずに!
裸足の道では、目隠しと体験後の足拭き用に少し長めのタオルが必要です。
木立の中を進むので、気になる方は虫除けグッズなどを身につけておくと良いかもしれません。
富良野自然塾東京校
対象 | 小学生以上(低学年は要保護者同伴) |
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所要時間 | 約120分 |
開塾日 | 第2・4金曜日/1日2回 午前の部 10:00〜12:00 午後の部 13:30〜15:30 |
料金 | 大人1,700円 小・中学生・高校・大学生・専門生以下 900円 シルバー(65歳以上)900円 ※税別 ※昭和記念公園入園料別 団体料金(20名様以上)はお問い合わせください。 |
ご予約・お問い合わせ | 富良野自然塾東京校専用ダイヤル 042-528-7005 ※富良野自然塾以外のお問い合わせにはお応えできません。 ※ホームページからの予約受付はございません。 |
服装・持ち物について | 動きやすい服装や靴、足ふきタオル、日よけの防止や飲み物 |
「富良野自然塾東京校」の参加には事前予約が必要です。
別途、国営昭和記念公園の入園料がかかりますので、公園の入園ゲートにて参加費と入園料のお支払いが必要です。